うたかた

オタクの観劇メモです。

ミュージカル『ソーホー・シンダーズ』

ミュージカル『ソーホー・シンダーズ』

東京公演:よみうり大手町ホール
2019年3月9日(土)~3月21日(木)

大阪公演:森ノ宮ピロティホール
2019年3月23日(土)〜3月24日(日)

金沢公演:北國新聞 赤羽ホール
2019年3月26日(火)〜3月27日(水)

愛知公演:刈谷市総合文化センター アイリス
2019年3月28日(木)

神奈川公演:やまと芸術文化ホール メインホール
2019年3月31日(日)

翻訳・訳詞:高橋亜子
演出:元吉庸泰
出演:
林 翔太、 松岡 充
東山光明 、谷口あかり、西川大貴、豊原江理佳、菜々香青野紗穂
マルシア大澄賢也

 

キャストさんの出演歴を確認しましたらタイタニック、RENTと、観た事のある作品が結構あったのでキャストの皆様をどこかしらで観ている気がします。
実力派のキャストさん達がアンサンブルを兼ねて入れ替わり立ち替わり登場されていて観る側としてはとても楽しい。。
(日本版は人数絞ってアンサンブルを兼ねているので本家より人数少なめです)

松岡さんや菜々香さんなどアーティスト活動をされている方、ミュージカル!っていうよりポップスっぽく歌い上げられている印象。
最近出てきたミュージカル作品ってポップスっぽい曲が多いというイメージなので親和性が高いですね。
ダナとクローダ(青野さん・菜々香さん)がメインの歌(Fifteen Minutes)では特に、格好良くて華やかな歌声のダナクロ姉妹メインで他キャストがコーラスとして歌うので重厚感があり迫力があって好きです。

作品のテーマとして『普通とはなにか?』を問い掛けられる作品、とアフタートークで松岡さんが仰っていて思ったのですが
ロビーとヴェルクロが歌っていた「Wishing For The Normal」でヴェルクロにとっての『普通の』願いの中に『ソファで赤ちゃんをあやしたり』…というフレーズがあったのですが、ヴェルクロにとって大切な人との子供がいる生活は高望みではないけれど、ロビーとジェイムズにとっては?…と考えると、『普通への願望』って、境遇により差があるもので本当に様々だなと考えてしまいました。

ざっくりキャストさんとキャラクターの感想。
(元々思いついた部分の感想だけのつもりだったのですが膨れ上がりました。全キャラクターの事は書いてないです)

○ロビー(林くん)
聴きやすくて、高音がスカっと上がるのも気持ち良い歌声。
どこまでいっても優しい声色に感じる声が素敵です。
ジェイムズと両思いだったり、ベリンガム卿のお気に入りだったり、コインランドリーにきたゲイ(?)(東山さん)にアプローチされてたり、あの素朴感でゲイというところに惹かれるのでしょうかね。本家のロビーも素朴系な印象。
ヴェルクロが「私のゲイを見分ける能力も落ちた…」と言っていたのですが、それだけ多様性が肯定的に、オープンになってきた時代なんだと言いたいのかなと思いました。

途中からウィリアムらから呼ばれている「レントボーイ(rent boy)=男娼」だそうです。
なかなか馴染みない表現だったのけど、海外といいますかソーホーのような地区ではお馴染みの言葉なのでしょうか?

○ジェイムズ(松岡さん)
凄く、難しい要素を併せ持ったキャラクターだと思いました。
ジェイムズ最大の問題は、スキャンダルになってもなおマリリンと結婚したいと伝えながらロビーとも付き合いたいと思っている気の多さであり、婚約者がいるのに浮気していた事であり、世間的にロビーが「レントボーイ」と捉えられてしまっていてロビーと付き合っている事…なのではないかと思うのですが。
政界進出においてクリーンなイメージにするという意味でマリリンと婚約しているという所から感じるのは、海外においてもマイノリティというのはイメージとしてはネガティブな印象のかな…と思いました。そして、ジェイムズ自身ですらそう思っている。
(作品は2008年初演なので、今の海外では捉え方は変わってきているのかな?)

ジェイムズがバイセクシャルであるという部分は話が進むと明らかになりますがマリリンの「あなたは変わらないし、私には変えられない」というのが、こういったセクシャルマイノリティにも関わる事だったりするのかなと思ったり。

○ダナ(青野さん)、クローダ(菜々香さん)
キャストからも絶大な人気を誇っていた、圧倒的に尖ったキャラクター2人です(笑)
尖りすぎていてなかなか共感するのは難しい?と思いきや妙にリアルな男運のなさを嘆いているようにも思えたのでダナクロの気持ちが刺さる方もいるだろうなあ。
見た目のインパクトから所作まで、細かいキャラクター作りだったり、試行錯誤されたんだなあという様子が伺えます。

「I'm So Over Men」の合間のアカペラだったり、歌声が圧倒的に華やかで素晴らしいです。
青野さんは迫力ある格好良い歌声で、菜々香さんは可愛らしくも力強い歌声。お二方の声のバランスも素敵。
客席との絡みや日替わりも楽しくて凄いコンビでした…。
パーティ前の「体中に接着剤を塗ったくってアクセサリーの上を転げまわったみたい」ってクローダのセリフが好きです。意外と詩的な表現をされる。

○ヴェルクロ(豊原さん)
とっても可愛らしい声と、オリエンタルとも欧米的ともとれるお顔立ちの不思議な方です。何となくイメージ的にスパニッシュ系って感じ。観れば観るほど舞台に立つ豊原さんはスパニッシュ感が溢れていました。
そういえばヴェルクロってアメリカで商標登録されている?いわゆるマジックテープの事らしいですね。
シンデレラが「灰」という好ましくないあだ名なのをなぞらえた存在なのがヴェルクロなんだなと。
(サーシャの持ってた財布がマジックテープ式だった事に深い意味はないですよね…?)

マリリンにロビーの事を話している時の「ロビーがゲイである事は親友になる妨げにはならなかった」という表現が、印象に残りました。
健気で優しくて可愛らしいヴェルクロには幸せになって頂きたい。
ラスト「金魚」を持った男性の役は大澄さんでした(笑)

○マリリン(谷口さん)
女性共感率ナンバーワンと名高いマリリン
谷口さんの可愛らしくて綺麗な声と、華奢で小柄なところと、マリリンの勝ち気さと健気さと快活なキャリアウーマンっぽさがアンバランスで、そのバランスがおもしろいなと感じました。
パーティドレス姿?の時に思いましたが、やっぱり谷口さん立ち姿が美しくて観ていて良いなあと思います。
マリリンは弁護士として活躍されて充実しているのに、タイムリミットを感じてしまうというのが女性の難しいところだなあと。ヴェルクロとランドリーで語り合うシーンは何ともいえない気持ちになります。
ヴェルクロを「ソニア」と、本名で呼ぶところにマリリンの誠実さを感じます。とても魅力的なキャラクターでした。
マリリンにも幸せになって頂きたい!

○サーシャ/語り(西川くん)
今回は歌よりセリフ(ナレーション)が多い西川くんです。
オープニングは「語り」のタップから始まり、ソーホーについての説明から入ります。
語りも「サーシャ」のまま?です。ロビーのランドリーや広場にサーシャは行っていない筈なのでなぜその場面についてを語れるのか?が分からないので不思議な立ち位置であります。

自ら何かを発信しなかったサーシャが(マリリンに訴える事ができると言われても「大丈夫…」と拒んでいたのに)ウィリアムを告発するに至った心理の動きだったりが興味深いなと思います。
(サーシャとして)ジェイムズを見ている時の表情だったり、ジェームズを貶めようとするウィリアムを睨んだり、(語りとして)ダナクロ姉妹に「ああ、腹立つ!」と苛立っていたり、駅で再会したロビーとジェイムズを嬉しそうに眺めていたり、観ているとなかなか感情表現が豊かなキャラクターでした。
正義感なのか、ジェイムズへのリスペクトなのか、何かを隠して生きている存在なのか…。
そういえば「It's Hard To Tell」の時にサーシャもといアンサンブルが女装(?)で登場されるのですが、そのままの姿で語りに戻るので、それがサーシャの「隠し事」という考え方をしてみるのもアリなのかなあと思ったり。
(そもそも本家では語りが女性=サーシャ、トランスヴェスタイトのアンサンブルと語りは別々の人物、なので演出と人員配置の都合でしょうけど)

 

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