うたかた

オタクの観劇メモです。

ミュージカル『アンクル・トム』 

ミュージカル『アンクル・トム』 

 

【公演期間・劇場】
博品館劇場 2019年10月18日(金)~27日(日)

【劇作・脚本・演出】
オリジナル劇作・作曲:イ・ヨンギュ
日本版演出:落石明憲
脚本:吉﨑崇二
演出:落石明憲

【出演】
上口耕平 / 池田有希子、内藤大希 / 新納慎也

※エンカレッジメンバー
山田元・高畑こと美・ユーリック武蔵/新納慎也(特別出演)

 

 

新しい韓国ミュージカルの日本版。演出も結構変更がなされているそうですが。
売れない(書き上げられない)小説家のケビンと、隣人トム、編集者マギー、ケビンの親友レイモンド
ケビンと隣人を取り巻く周辺で起きる事件を軸に進むサスペンスミステリーです。
(ストーリーを伝えたいのですが、そもそも自分自身が理解できていないので書くに書けない…)

〇セットについて
木が組まれた背景がパーテーションのようになっていて、その裏側にキャストさんが立っていても何となく何かしているのが分かるようになっている。
その他(ケビンとトムの部屋の)デスクやキャビネット、レイモンド生花店のワゴンと、登場する大道具もシンプル。
想像は観客任せという感じで演劇的だなと思いました。

○キャストについて
・新納さん/トム、ラルフ・ブース?、他
本キャスト版とエンカレッジキャスト版 どちらにも出演されている。一番お忙しい方。

ミステリアスだったり、溌剌としている、という役をされているイメージがある新納さん。
今回の「トムさん」のキャラクターは「優しいおじいさん」という感じで、新納さんの今までのイメージと全く違うので驚きました。「ラルフ」の方が今までのイメージに近いかも。
「アンクル・トム」の楽曲が基本的に上口さんによく合っていたのですが、新納さんが歌うと途端に新納さんの世界に。
 
・上口さん/ケビン
不器用だったり気の弱そうな印象の役を演じられているイメージが強い上口さんですが、今までのイメージ以上にぐっと影を落としたようなキャラクター。
過去のトラウマから情緒不安定になったり、途中からサイコパス的な猟奇的な役柄に豹変するのですが、妖しく魅力的に演じられていました。
「アンクル・トム」の楽曲は何と言うかポップスともミュージカルとも違う「現代ミュージカル」だなという印象を受ける曲調だったのですが、上口さんの歌声に良く合っている。

・山田さん/ケビン
(エンカレッジキャスト)
歌声が伸びやかで存在感もあって、大きな劇場が似合いそうな方だなと思ったのですがエリザベートとかリトルマーメイドとか、大きい舞台にも出演されているんですよね。
本キャストの方がハスキーっぽい声の方は多いですね。
 
ケビンは弱気な小説家…ですが、どちらのケビンも何と言うかスタイリッシュなキャストさんだなと思いました。

・池田さん/マギー、他
マギーと、その他の役でとても同一の方が演じられているとは思えない振り幅で驚きました。改めて役者さんって凄いと思いました…
マギー編集長は「プラダを着た悪魔」感あります(笑)
ハスキーな声質が他3名のキャストさんと良いバランスで、気持ち良く歌声の均衡が取れたメンバーだなと思いました。

・高畑さん/マギー、他
(エンカレッジキャスト)
池田マギーの曲者っぽさよりは、やり手の編集者という感じでしょうか。
本キャストの方が濃いと評されているようなのですが池田さんの存在感が最たる…
個人的には高畑マギーも魅力的な女性という印象で好きです。
 
・内藤さん/レイモンド、他
一見すると陽気!で、少し謎めいた役でした。
明るいキャラクターも演じられていたけど、若干ガテン系の印象を与える部分があるのが今までと少し違う役所かも。
「アンクル・トム」の楽曲にぴったりハマった上口さんと新納さんの歌声がとにかくパワフルで伸びやかでしたが、そんなメンバーの中で内藤さんの歌声も全く沈み込まずパワフルな歌声で、本当に今作は歌声の強いメンバー揃いでした。

・ユーリック武蔵さん/レイモンド、他
(エンカレッジキャスト)
豊かな歌声というのか。爽やかで格好良い歌声の方でした。
どんっとパワフルな歌声の内藤さんと違うレイモンド。
 
ビジュアルや演技は、溌剌としていて愛嬌があって、可愛いレイモンドだなと思いました。
初めて拝見する方だったのですが、レイモンドはユーリックさんに合わせて組み立てた役なのではないかとすら思いました。


○全体の話/感想
「アンクル・トム」最大の魅力は、舞台で繰り広げられているやり取りは、どこまでが「虚構(小説)」でどこまでが「現実」なのかが分からないという不思議な世界観。
「ここで終わり!?」と、客席が動揺して終わった初日の空気が(笑)
 
ひとつのアンサーをもって制作はされていて、舞台上にヒントもあるようなのですが、自分としては拾いきれず結論が分からないまま…
ラルフ(新納さん)の小説と、ケビンの小説とケビンの幻覚の境目が曖昧に混ざり合っていて、「どこまでが小説なのかが分からない」
…という複雑な事に。
 
個人的には「曲自体も、キャストさんの歌も演技もとても魅力的なのに、ストーリーを理解するのが追い付かずパフォーマンスに注目する所にまで至る事ができない」という段階で終わってしまったので、舞台で観るならもう少し易しいストーリーが良いなあ…というのが正直な所。
ストーリー的には小説でじっくり何回も読み直したいと思うお話でした。
 

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ミュージカル『アンクル・トム』