うたかた

オタクの観劇メモです。

【DAY ZERO】バーの客について

 

ジョージ「目が見えないというのはどうだろう?足が不自由というのは?そうだ、ゲイ。あれは自己申告だ。ゲイなら徴兵を逃れられる」
(略)
ゲイバーの客「俺たちには入隊の権利も与えられない」
という応酬が気になったのでちょっとだけ調べてみました。

 

 

ネタ元のミュージカルの感想はこちら。 

sfor98.hatenablog.com

 

 

○「Don't Ask, Don't Tell」について
政権によりLGBTについての公約も随分と変わっているようですが
DAY ZEROが公開されているのが2007年なので、ジョージの話の元は1994年から2011年の志願兵制度についての政策「Don't Ask, Don't Tell」
LGBT(主たるとしてゲイ)であることを「尋ねない、答えない」という取り決めかと。

ここからは調べた時に「ゲイ」についての表記しか見つけられなかったので「ゲイ」に限定して記載していきます。
それ以前はゲイは入隊拒否と取り決められていた。
「Don't Ask, Don't Tell」となってからもゲイであると分かれば入隊は拒否なのだそう。
同性ばかりが共に過ごす空間で、同性愛者がいることで規律は守られるのか?という事らしい(ジョージがバーの客と争った時に言い放った言葉ですね。)

更に、「DAY ZERO」パンフレットの補足を読んで理解しましたが、志願兵制度では登録をする事で様々な特典を得られるので、登録をするという事。
ただし、いざ軍へと命令が下ると自ら(事実でないのに)「ゲイだ」と申告する人が絶えなかった。申告されてしまった以上は軍に入れられなかった。
そこで「Don't Ask, Don't Tell」という取り決め…つまり、自らも『言わない』という取り決めという事。
志願兵を増やしたいが、LGBTは受け入れできない。しかし人数を増やしたい目的から「LGBTであるか聞かない」「LGBTであるか言わない(答えない/先に申告しようとしない)」という事らしい。

また、ゲイの方を守る目的も側面にはあるようで「ゲイだ」と分かるとイジメやリンチが発生しやすくなる。マイノリティは目を付けられターゲットにされやすいから言わないように、という意味もあったようです。
まさかの、アーロンの「嫌われ者が先に死ぬ」という言葉が何となくリンクした。

ちなみに軍内で「異性愛者であると思わせられていれば、同性での行為も可」とか「異性愛者により、同性への性的暴行が発生している」などの事案があるそうで、闇が深い( º_º )

 

○「DAY ZERO」の世界について
ところでジョージがゲイバーの客に「あんたは上手くやっているよな、男に抱かれているようには見えない」と言い放ったので、彼(客)がジョージと同様にゲイであるポーズをして徴兵を逃れようとしている可能性についても少し考えてみました。

ジョージの発言から逃げ去ろうとしているようにも見える。
ポーズなのかな?とも思うのですが「戦う権利が与えられない」「酷い差別。俺達のどこが悪いのか?」と憤慨していたのがとても印象的。
(まあ、喧嘩腰で突っかかられたら逃げるよね。)

 

西川くんの役へのアプローチが色々とあってゲイバーの客についても何パターンかあるようです。

基本的に西川くんの演じるゲイがアイコン的な(いわゆるオネエ的な・・・)ゲイと全く違うのですが。けっこう雄々しく、告白した事で得られなかった権利・・・について歌い上げるのが印象的なのです。

彼は、ゲイである事を隠したくないし、そうある事にプライドもある。そういう権利(登録して得られる特典の話です)というものを捨てても伝えたかったプライドみたいなものを歌から感じて好きでした。
(「命も紙切れひとつで決められるらしいな」、「国を守るために死ぬ権利なんて要らない」、とジョージに言い放ちますが。)

 

西川くんがアイコンに当てはめたゲイを演じていないのは、ゲイとトランスジェンダーの違いとして捉えているのかな?と思っています。

ただ、アプローチのひとつとしてアイコン的なゲイの演技をしている回があって、(アーロンに仲裁された時)腕組みをする仕草がちょっと女性的な時があったのです。
ゲイバーにいた彼は確定で、その中でどういった演技にするかは西川くん次第なのかな?と思いました。

ジョージの「そう見えない」については、招集を受け入れられなかったジョージの「俺が偽ろうとしているように、こいつも偽っているに違いない」という発想なのかなあと。

移民問題も根底にありそうで、セクシャルマイノリティの差別問題も膨らませると作品が収拾つかなくなりそう。むしろ根っこに深いレイシズムがある事を示唆しているのか?
西川くんの役はどれもさらっと流すには濃すぎました…。