うたかた

オタクの観劇メモです。

グーテンバーグ!ザ・ミュージカル!2018

グーテンバーグ!ザ・ミュージカル!2018

新宿村LIVE

日本語上演台本・訳詞・演出:板垣恭一
音楽監督・ピアノ:桑原まこ
振付:当銀大輔

出演:
福井晶一&原田優一
鯨井康介&上口耕平

 

鯨井さん&上口さんチームを観劇しました。

ストーリーは、作家のダグ(福井さん/鯨井さん)と作曲家のバド(原田さん/上口さん)がコンビを組み「グーテンバーグ」というミュージカルをブロードウェイで公開すべくバッカーズ・オーディション(プレゼン公演)をスポンサー(観客)に向けて開催するという内容。

 

事前に調べたら「ミュージカルあるある」やミュージカルのパロディが盛りだくさんという情報が出てきたので、勉強不足の自分でも大丈夫かと心配になったのですが全く問題なかったです。
福井さん&原田さんチームで取り扱われる作品は分かりませんが、鯨井さん&上口さんチームはお二人の出演作品(鯨井さんが出演したテニミュや、上口さんがダンサー出身という事のネタ)、朝ドラのタイトルネタ、ディズニー…のような何か…?などなど。
弱虫ペダル」のネタの時に「自転車を漕ぐ演技、想像力が大切!」というお話が出てきて、考えてみれば2.5次元作品ってイマジネーションをフル稼働させているなあと改めて思いました。

 

○作品の構成について
さて、なぜ想像力が大切か、という話になったかと言えば、バッカーズ・オーディションとは資金繰りのため作家がスポンサーを相手に作品の解説をしながら、作家自身が全ての役を演じるため。
役を演じるために作家が役名が書かれたキャップを被り、大道具は必要最低限に説明の書かれたダンボールがあるだけ。とてもシンプルな舞台装置です。
シンプルなだけに、舞台に上がっているお二人はとにかく休憩する間もなく喋り倒し、歌い、踊る!
どこまでアドリブか分からない程に語り、時にお互いのセリフに吹き出したり、とても良いコンビネーションで観ていてとても楽しかったです。
歌とダンスが上手い方々の全力の悪ふざけを観ているという感じ(笑)

出演者にとってはエネルギーと精神力を削るような舞台なのだとは思いますが!

 

○劇中劇について
「グーテンバーグ」の作品そのものや、用語なんかも区切りごとにダグ&バドが解説を交えてくれていて勉強になりました。
ミュージカルには「ほしいソング」や「ビスケットソング」のような曲があり、作品の中でどのような効果を与えているか、などなど。
修道士に閉じ込められたヘルベチカ(ヒロイン)が塔から飛んで抜け出すシーンの事を「ヘルベチカの自殺願望を仄めかした表現」とダグ&バドが解説していて、あれはそういう表現だったんだなと、個人的には目から鱗な説明でした。

さて、先に言いましたように作家のダグがストーリーを作り、作曲家のバドが曲を作ります。
ストーリーはやりたい放題で奔放ですが、その中でもダグの観客へのメッセージ性を感じさせる物語。そしてダグが「天才」と信じているバドの音楽もキャッチーで素敵なのです。
しかし歌詞とダンスは何と言いましょうか…「本職ではない二人が作った脱力系」…と言いましょうか(それでもダンスの端々から上口さんは本職のダンサーさんなんだなと感じさせる美しさがありましたが!)
舞台の骨組みは作家と作曲家がいれば組めるけど、作品を洗練させるためには色んなプロフェッショナルが集まって初めて完成するんだと、そんなメッセージが込められているように感じました。
あえてゆるく仕上げているであろう板垣さんと当銀さん、凄いです。

色々と書いたのですが、観に行くととにかく楽しめるとても素敵なミュージカルでした!
何より普段は大きな劇場で活躍されている方々がシンプルな小劇場で歌い、演じるお姿はとても新鮮だと思います。
再々演があれば是非、福井さん&原田さんチームも観たいと思います。

 

○余談
とても個人的な話ですが
この作品を知ったのがミュージカルの成り立ちについて調べていた時にブロードウェイでは「バッカーズ・オーディション」という資金繰りの方法があるという事、バッカーズ・オーディションを題材にしたオフブロードウェイ作品があるという事、そしてそのオフブロードウェイ作品を日本で公演した事がある、更に日本公演が今年再演されると知ったのが今年の4月でした。

その時点で観劇は決めていたのですが、3月に行われた「ミュージカルフェス」のトークショーで「お月さまへようこそ」と共に取り扱われた「In This House」を手掛けられたconSeptさんの作品であったり、「DAY ZERO」に出演されていた上口さんが出演していたり、西川くんと「かららん」で活動される桑原あいさんのお姉様の桑原まこさんが音楽監督だったりと、(自分の中で勝手に)点と点が繋がったような作品になったなと不思議に感じているのでした。