うたかた

オタクの観劇メモです。

ミュージカル『タイタニック』

ミュージカル『タイタニック

東京公演:日本青年館ホール
2018年10月1日(月)10月13日(土)
大阪公演:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2018年10月17日(水)〜10月22日(月)

【脚本】ピーター・ストーン
【作詞・作曲】モーリー・イェストン
【演出】トム・サザーランド

【出演】
加藤和樹石川禅藤岡正明、戸井勝海、相葉裕樹津田英佑
渡辺大輔、上口耕平、小野田龍之介、木内健人、百名ヒロキ、吉田広大、栗原英雄
霧矢大夢菊地美香、小南満佑子、屋比久知奈、豊原江理佳
安寿ミラ、佐山陽規、鈴木壮麻

 

日本では2015年に上演されたミュージカルの再演。
今回初めての観劇なのですが作品自体については下調べせず、史実についてと沈没原因の検証動画などをざっと調べて観劇しました。
(映画のタイタニックはだいぶ前に一回観た程度です)

舞台セット全体が客船のデッキのようで、シンプルな造り。
群像劇なので22名のキャストが一斉に出ると舞台が狭くなってしまうので、またキャストの方々が実力派で歌が重厚なので、舞台はシンプルで良いのかなと思いました。
キャストは多いですが、それでも2000人を超える人々が乗船した客船の数日間の物語なので、少ないくらい。
沈没後に「沈む中で演奏を続けたオーケストラが…」というようなワードがありましたが、オーケストラに関わるキャストがミュージカルではバンドマスター役の木内さんしかいらっしゃらないので、その辺りは映画の方が分かりやすいかも。

それぞれのキャストさんが複数の役を兼ねていて、ひとりひとりが「その時代の人々の象徴」なのだなと思いました。
例えば「三人のケイト」は労働と自立を求めた当時の女性たち。百名さんが演じた「ベルボーイ」も作中で語られていますがタイタニック号には50名乗船していたと。
石川さんの演じられたオーナーのイスメイが悪役の立場を担っていましたが、実際のところイスメイだけが悪かったのではなく、「速度」や「利益」を求めたホワイト・スター・ライン社を象徴した存在だったのではないかなと。

下調べした時に沈没の最大の原因として使用していたリベットの欠陥という事が挙げられていましたが、今回ミュージカルを観て感じたのは、タイタニック沈没が20世紀最大の海難事故となったのは全ての人々が「不沈船」に乗っているという驕りがあったからだと感じました。
上口さんの演じられていた一等室客が「何が起きているか説明がなく納得できないので救命胴衣の着用を拒否」「停電で明らかな身の危険がある異変を感じて救命胴衣を着用」というシーンがあって、そうならなければ避難対応ができない所が、自分にも思い当たる節があり現代にも通ずるものがあるなと思いました。

物語としては勿論ですが、上記で挙げたように事故が起きてなぜここまで被害者が増えてしまったか?という点は、自身に置き換えて考えてみると刺さるものがありましたし、沈み行く船の中での人々の心の動きが感じられて、考えさせられる作品でした。
個人的に好きな作品です。

一部、キャストさんの感想。

設計士・アンドリュース:加藤和樹さん
主演というクレジットにしては出番の少ない役所。
(表舞台に出る職業でもないので、仕方がないのでしょうかね…)
いざ出番となると目を引きますし、華やか。

機関士・バレット:藤岡正明さん
ソロが多かったのと、歌声が作品の雰囲気によく合っているなと感じました(今回、個人的に藤岡さんと戸井さんの歌が好きでした)
上口さんと藤岡さんの通信室のやりとりが優しい雰囲気で、素敵でした。