うたかた

オタクの観劇メモです。

『ラヴズ・レイバーズ・ロスト -恋の骨折り損-』

『ラヴズ・レイバーズ・ロスト -恋の骨折り損-』

【期間・会場】
(東京)シアタークリエ
2019年10月1日( 火)~25日(金)

(兵庫)兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール
2019年11月1日(金)~4日(月)

(福岡)福岡市民会館
2019年11月9日(土)~10日(日)

(愛知)愛知県芸術劇場大ホール
2019年11月16日(土)~17日(日)

【原作】William Shakespeare
【楽曲】マイケル・フリードマン
【脚色】アレックス・ティンバース
【翻訳・訳詞・演出】上田一豪

【出演】
村井良大、沙央くらま、渡辺大輔、入野自由大山真志中別府葵田村芽実伊波杏樹樋口日奈、加藤潤一、石川新太、一色洋平、遠山裕介、ひのあらた、木村花代、三浦涼介

 

 
○セットについて
上手の奥側に国王邸、手前側にミニテーブルと椅子
センター奥にジャグジー(途中で板が渡されて、ステージに変わりました)
下手の奥側にバンドがいてその上にはグランピングのような天蓋、手前側はコスタード営むバーカウンターになっていて、天蓋とカウンターの間くらいの天井からシャンデリアが吊られています。
会場内に入ると現代風な綺麗なセットがお迎えしてくれるので、それだけでワクワクしてきます。

○配役について
東宝版はクレジット的に、砂岡事務所版では(恐らく)狂言回しだったビローンが主役という事になっています。
語り部兼、主役という所でしょうか。
ただ、登場人物全体にスポットを当てている印象が強いです。
それにより「国王と3人の学友の物語」から「群像劇」というストーリーの進み方に。メインの国王らと姫様らへのフォーカスが弱くなっているように感じたので、良し悪しかなと思いました。


○演出と物語について
セットからも現代風となっているのですが。
ジャケネッタとコスタードがホロファニーズに手紙を読んでもらおうとするのは、原作の時代だと識字ができないのかなと思うのですが。コスタードの誤配達はうっかりとして、ジャケネッタは現代だと不思議な感じに。あれだけ綺麗な邸宅に住み、勉学に勤しもうとしている国王のもとの国民と考えると、なおのこと。

という事はありましたが、現代風にアレンジした事で取っ付きやすくなっています。

こちらの男女は大学時代に因縁があるという設定になっています(ボイエットに彼女らの名前確認してたけど)
彼らが一目惚れして彼女らに扮装までして熱烈にアプローチすること、そんな彼らをこらしめる!と姫様たちがやや過剰なイタズラを仕掛ける所という軸そのものが、接近禁止の約束がある彼らなのにどうしてそこまで執着するのか?と不思議だったので、個人的には原作よりこちらの方が納得できました。
また手紙の内容などがざっと短い言葉になっていたりするので、それを取っ付きやすいと捉えるか、シェークスピアらしさが薄れると捉えるか、好みは分かれるかなと思います。

○少しだけキャラクターなどについて感想
ビローン:村井良大
RENTでも語り部兼、主役だった村井さんは語りのリズムが良い。
こちらの方が皮肉っぽさが強いビローンでした。

ロザライン:沙央くらま
砂岡事務所版と比べると、寡黙な印象のロザライン。沙央さんのハスキーな声と淡々と言葉少ないセリフがよく合っていて、説得力がある。
砂岡事務所版が弁の立つビローンを言い負かすロザラインなら、こちらは口の達者なビローンを包むようなロザラインという感じ。どちらも魅力的です。

アーマード:大山真志
良くも悪くも存在感が最もあったのはアーマードかもしれません。
登場シーンから強烈で、とにかく身体が全体的に大きくて、歌声もパワフルでよく響く。
こちらのアーマードはプリンシパルって感じでしたね。

ジャケネッタ:田村芽実
群像劇である事やアーマードの活躍が増える事で存在感を増したと思ったのはジャケネッタでした。
アーマードに冷たい態度をとっていたのは嫌いなのではなく、ジャケネッタの育った環境のせいで信用できなくなっていたのですね。そんな孤独や淋しさを抱えている存在なんだろうなと、田村さんのジャケネッタを観て感じました。

モス:石川新太
ジャケネッタ同様に群像劇、アーマードのメインの恩恵を受けたキャラクターかなと。
キーボードやミニギター(ウクレレ?)を演奏するシーンもあったり。猫好き(?)という設定があったりで予想より活躍のシーンが多かったです。
ソロの曲もあって、もう少し活躍する役が観てみたいなと思いました。
※石川さんツイッターで、ウクレレと書いてました。

ちなみに公演後に抽選会がある日に行ったのですが、イベントの進行をしていたのが石川さんでした。円滑に回すしフォローも抜かりなくて本当に凄い。

ボイエット:一色洋平
良いキャラになっていたので役所としては出番がやや少なくて勿体ない方でした。
キレキレに動き回っていて、動きを追ってしまう。

コスタード:遠山裕介
開演前から客席でがっちりと観客の心を鷲掴みにしていました(笑)
開演まで客席でドリンクをコスタードと、ダルが補助をして販売しています。
(行った日はオランジーナを販売していました。メロンソーダ・炭酸水という日もあるようです)

文字は読めず、田舎者で愚者を装う、しかし核心を突く…というイメージのコスタードなのですが現代風にするとバーで働くお調子者になるのですね。
アレンジがとても面白いキャラクターでした。


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